『 どこよりも遠い場所にいる君へ / 阿部暁子 』 集英社オレンジ文庫
【あらすじ】
ある秘密を抱えた月ヶ瀬和希は、知り合いのいない環境を求め離島の釆岐島高校に進学した。
釆岐島には「神隠しの入り江」と呼ばれる場所があり、夏の初め、和希は神隠しの入り江で少女が倒れているのを発見する。
病院で意識をとり戻した少女の名は七緒、16歳。
そして、身元不明。
入り江で七緒がつぶやいた「1974年」という言葉は?
感動のボーイ・ミーツ・ガール!
- 作者:阿部 暁子
- 発売日: 2017/10/20
- メディア: 文庫
【感想】
訳も分からぬまま加害者家族となり、家族も夢も失った和希。
何もかもを捨てるように『神隠し』や『マレビト』の言い伝えのある離島の高校へ進学し、虚無感を抱えながら日々を過ごしていたが……。
初読み作家さん。
あらすじの『感動のボーイ・ミーツ・ガール!』や帯の『離島を舞台にした恋物語』の文字を見て、タイムリープを絡めた青春純愛物語……的なものを想像していたが、読んでみると甘さや切なさよりも悪意に晒される苦しみ、恋愛観よりも人生観が描かれている作品だった。
彼の想像する方舟があまりに悲しくて、読んでいて思わず涙ぐんでしまった。
ずっとそばで支えてきた幹也の口から語られた真相も悲しかったし、七緒からのメッセージも悲しかったし……。
その度にティッシュを片手に読んでいたのだが、不思議と読後感は爽やか。
離島の穏やかな風景や優しい仲間たち、それに三白眼でガラの悪いダメな大人……に見えて実はものすごくいい人だった高津氏のおかげかなぁ。
高津が和希にスケッチブックを渡したシーンで、各章のタイトルページにあったイラストはこれだったのか!?ともう1度全てを見返し、また切なくなる私……(笑)。
高津も和希と同じで、手の届かない場所にいる誰かを今も想っているのだろうか。
読メの感想で続編の存在を知ったので、近々そちらも読んでみようと思う。
和希と愉快な仲間たちも出てくるといいな~。